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貴方が助けてくれようとしていることを知っている。
手を差し伸べようとしてくれていることを知っている。
けれど貴方には私を助けられないことも、知っている。
貴方の視線はいつも私に在って、声をかけようと開かれた唇は、しかし何も紡ぐことなく再び閉じられる。
言えないなら、言わなくていいのに。
もどかしければ、離れてもいいのに。
貴方が、近寄り過ぎるから。
貴方が、真剣な瞳で私を見るから。
貴方が誠実なあまり、私の為に全てを投げ出してしまうのが怖くて。
・・・・私は、貴方に助けを求められない。
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こんな話を知っている?
それはどこにでもある日常。
つまらない笑い話。
二人の人と、一つのパイ。
お互いにそれが食べたいんだけど、お互いに譲り合うから
なかなかパイは食べられない。
そうこうしているうちに日が過ぎて
パイは腐って食べられなくなってしまう。
どちらかが先に手を伸ばせば良かったのに。
伸ばす手は、どちらでも良かったのに。
答えが見つからなければ、とりあえず手を伸ばせばいい。
もしもその手が相手と重なったら、パイは二つに分ければいい。
自分の気持ちを表に出せぬまま、パイが腐っていくのを眺めるよりは。
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貴方が助けてくれるなら。
イラナイモノは、捨ててしまって。
君を、貴方を、苦しめないセカイに。
渡り廊下の端から手を伸ばす
端から見ればなんと滑稽で、愚かしいことか。